ミチスガラ

LDHアーティストが好き。色々書きます

HiGH&LOWとLDHが教えてくれたこと①「拝啓、村山良樹様」

2019年12月26日。

「村山さん、ありがとう!」
と、私はこれまでに何度となく叫んできた。

でもその日はいつもと違っていた。
叫んだ先にあるのは、応援上映のスクリーンじゃなかった。

 声をあげて泣くのなんて何年ぶりだっただろう。
「ありがとう」
それが全てだったので、あとは子供のように泣きじゃくるしかできなくなってしまった。

お話の中を生きていたはずの憧れのヒーローが、本当に目の前に現れた。
そして、確かにその人に向かって「ありがとう」と言うことができた。

ありがとう『HiGH&LOW』。ありがとう村山さん。
そしてありがとうLDH

私は『HiGH&LOW』とLDHに出会って、やっと自分のことを許せるようになった気がする。

1.HiGH&LOWとの出会い

2019年9月の半ば頃、あれ面白いらしいね、観てみようか、と興味本位で友達と映画を観たのがきっかけでした。遡って、ドラマも観ました。
それが『HiGH&LOW』。そこからは、本当にあっという間でした。

当初、友達と映画3作の鑑賞会をすることが決まり、予習がてら少しドラマのシーズン1のさわりを少し観てみた時には「人数多いな…覚えられないのでは…?しかもずっと喧嘩してる。映画で長時間観たら疲れないか?」と、期待より不安の方が少し大きかったです。

でも『HiGH&LOW THE MOVIE(以下『ザム』)』は予想以上に魅力的で、何より楽しい映画でした。

(↓当時のツイートから抜粋)

・演出と美術に相当こだわってそうで絵力みたいなのが凄い。
 色と光のコントラストが常に綺麗で一枚絵みたいなシーンの連続

・どのくらいスタントかわからないけど、さすがの身体能力。
 アクションに見応えがある

・キャラ強い役にしっかり演技力ある俳優を据えてるから
 演技にガッカリすることが意外と少なかった

 

めまぐるしいカメラワークの中でも、一枚絵のような景色が連続していくので、一瞬たりとも目が離せませんでした。 

日頃ダンスで鍛え上げられているのであろうLDHグループの人達はさすがの身体能力だったし、その他の林遣都さんや窪田正孝さんなどの著名な俳優陣も、ここまで魅力的な動きが出来る人だったとは知らず、驚くばかりでした。

また、俳優陣の演技に関して言うと、そもそも恥ずかしながら私自身が「LDHグループの人達の演技力」について穿った見方をしていたのは否めないのですが、そこもかなり予想を覆されました。

もちろんこれだけメインキャストが大勢に及ぶ作品なので、観る人によっては個々の演技プランについて好き嫌いがあるかもしれませんが、少なくともストーリーへの没入を阻害されるようなことは殆どありませんでした。

そうして『ザム』でかなり心を掴まれ、その流れで『HiGH&LOW THE MOVIE2/END OF SKY』『HiGH&LOW THE MOVIE3/FINAL MISSION』と連続で観ました。展開やキャラ造形、台詞、価値観など、所々気になる箇所はあったけれど、それでも各キャラクター達の魅力に私はあっという間にハマってしまいました。

カッコいいことって、こんなにカッコいいんだ」。
そんな風に感じた覚えがあります。

姿かたちの美しい人達が、その身体を駆使して鋭くムダのない動きで敵を制圧していく。その光景が観ていて気持ちよくないわけないし、楽しくないわけないんだよな……と、当たり前なことに気が付かされました。

何より一番に心を掴まれたのが、やはりあの人でした。
山田裕貴さん演じる鬼邪高校の番長、村山良樹です。

2.村山さんとの出会い

映画鑑賞会の後、ファンの間でも“名作”として有名なドラマシーズン2における7話と8話を観終えた頃には、私にはもう村山さんが主人公であるようにしか思えなくなりました。

もちろん、彼はドラマから『ザム』へと続く“お話”自体の主人公ではありません。ただ私の心の中心にはずっと村山さんが居たし、なんなら、大人になってから自分が触れてきた創作物の中で考えても、かなりぶっちぎりで憧れのヒーローとなりました。

突飛な世界設定やアクの強い各チームのキャラが入り乱れるお話の中、誰よりも人間的魅力を感じさせてくれたのが村山さんでした。

キャラクターとしての見た目・中身それぞれの魅力は後述しますが、一番最初に心に残ったのはあの「」でした。

どんなに強い“がなり”の中にも心地よく瑞々しい芯が常に残っていて、時に切なさも感じさせるような、あの美しい叫び声
そして戦いの中のモノローグであった、心の底から搾り出されるように震えた声。 
俳優さんを声から好きになることが多い私は、あの声にすごく惹かれました。

村山さんは、ドラマシーズン1のチハルを巡っての抗争ではヒールに位置づけられていました。常に不敵な笑みを浮かべながら、主人公・コブラが率いる山王連合会に張り合っていました。

しかし、ケジメとしてのコブラとのタイマンでどうしても勝つことができず、最後は「俺とお前の違いは何だよ」と唸りながら自分の体を打ち、咆哮します。そうして全力で立ち向かった末、徹底的に負かされました。

あの、見ていて胸が苦しくなるような絶叫、悲痛な横顔。
激しい息遣いとボロボロの身動き。
私にはその全てが心底、かっこよく見えました。

村山さんは普段は飄々としていて、一見すると適当なようにも思えるし、最初の方はいわゆる“お山の大将”タイプのような印象だったけれど、そのシーンから後を観ていくうち、驚くほど真っ直ぐな人であるということがわかりました。ひとつひとつの言葉・演技・演出から、その様子が伺えるのです。

シーズン2は特にそれが顕著でした。コブラと全力で戦って負けてしまった自分。一方で、鬼邪高校の頭としての働きを求められる自分。

自分はこれからどうすればよいのか。その答えが出せるまでは、コブラその人にまで何の衒いもなく助言を求め、じっと考える村山さん。

その様子を見て、なんて美しいことだろう、と思いました。
村山さんは他者の言葉を素直に受け止められるけれど、だからといって安易に答えを求めたりはしない。自分なりに納得いく答えが見つかるまで、とてもよく考える。そういう描写がきっちりあるのです。

そして、ひとつの区切りとなる、鬼邪高校全日制の生徒・轟の奇襲が起こります。

卑怯な手を使って定時メンバーを襲い、村山さんを呼び寄せた轟一派。
誘いに乗ってきた村山さんを、轟は「形だけの不良」だと言ってのけます。
狭い見識で、上滑り気味の言葉で煽る轟。手段を選ばず、勝利を求める轟。その様子に村山さんはかつての自分の姿をみとめます。
そして轟と撃ち合いながら、自分の中で答えを見つけ出します。

俺の見たかった景色は、一人で見るもんじゃない
仲間と見るもんだった  

轟、教えてやるのが頭の務めかもな 
でもよ、仲間がいるだけじゃダメなんだよ
てめぇが変わんなきゃ、どうやら世界も変わんねぇみたいだわ

このモノローグ、そして何より最後の言葉に、私は心から感動しました。

それまでに私が観た『HiGH&LOW』シリーズ(特にドラマ)については、設定や展開に粗があったり、台詞の言い回しがしっくりこなかったり、また倫理観の部分でも多少観ていてひっかかることが何度かありました。

なので私は本当のところを言えば、この一連のシリーズの主に物語を通したメッセージ性については、少し舐めてかかっていた節があります。しかしここにきて、その目測が誤っていたことを痛感します。

あのシーンは少なくとも私にとって、やさしく強く背中を押されるという、素晴らしい力を持った表現物でした。

そうして気が付いたら、私は村山良樹という人物に強烈に憧れていました。

陰鬱な雰囲気を纏った見た目なのに、心根はとても真っ直ぐで芯が強くて、それでいて何とも言えない可愛らしさがある、あの唯一無二の番長に。

村山さんのキャラクター造形については演者である山田裕貴さんのアイディアが多分に含まれているそうなのですが、テレビ番組やインタビュー等で山田裕貴さん自身のことを知っていくと、村山さんがここまで味わい深く魅力的なキャラクターになったことも頷けました。

長くなるので詳細は割愛しますが、対コブラ・対轟それぞれのタイマンシーンなど、鬼邪高校での撮影の裏話は山田裕貴さんや一ノ瀬ワタルさんによって何度か語られています。いずれも胸が熱くなるエピソードばかりです。

この作品に賭ける山田裕貴さんの真っ直ぐな熱意が、村山良樹の物語と呼応し、周りの素晴らしい共演者やスタッフにも共鳴してゆき、それぞれが力を尽くしあって、あのドラマが作り上げられた。

まるで、コブラと轟に対して力を尽くして向き合った村山さんが、鬼邪高校を本当の意味で引っ張っていく“頭”に成長したように。

つまり、私たち視聴者が目にしていたのは紛れもない彼らの青春だったのだと私は思います。だからこそ鬼邪高校のエピソードは、真っ直ぐに視聴者の胸を打つのです。

こうして私は鬼邪高校、そしてそれを作り上げた人々のドラマに、心底やられてしまいました。 

そしてなんとも幸運なことに、この偶然の出会いがあったのは、鬼邪高校のスピンオフ映画『HiGH&LOW THE WORST』が公開される直前の出来事だったのです。

(続きます。)

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