ミチスガラ

LDHアーティストが好き。色々書きます

『STOP FOR NOTHING』から見えたもの―FANTASTICSの強さについて

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FANTASTICSの『STOP FOR NOTHING』については、リリース週に寄稿してました。⇩

realsound.jp

ただ、概要しか書けなかった部分が幾つかあったのと、リリース後けっこうすぐに『BATTLE OF TOKYO』プロモーションが始まってしまったので、正直もったいないなーとも思い、改めて自分がこの作品に感じたことについて書くことにしました。

想像以上に長くなってしまったので、じっくり読んでもらえたら幸いです。

「STOP FOR NOTHING」から見えたもの

「High Fever」以降のFANTASTICSによる明確な“取り組み”

…といえば、言わずもがな80~90年代スタイル。「CANNONBALL」もそうだったし「Keep On Movin'」もJ-POPとしては懐かしい趣でした。

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(⇧動画ではワンフレーズだけ)

ちなみに「Keep On Movin'」は、勇ましい歌詞なのにスッと耳に馴染む優しい歌です。サビの二人の歌声がすごく良い。話が逸れました。

日テレの番組&5月に上演された舞台に連動した動きではあったものの、1作だけスポットでやるのではなく継続して80年代~90年代リバイバル/カバーに注力するという明確な“取り組み”を行ったFANTASTICS。個人的にはその影響が今、少しずつ良い形で結実してきているように感じています。

具体的に言うと、この“取り組み”による所産には舞台に向けた方向性の強化という実際的なものだけではなく、従来の爽やかなポップサウンドから力強く尖ったサウンドへのイメージ革新※、さらにそれに伴ってのツインボーカルの着実な進化もあったと思っています。

(※表題曲以外だと「Tumbline Dice」とかクールかつ攻めた曲はあったわけですが。)

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昨年リリースされたシンセウェイヴ「High Fever」とハードコアテクノなパーティーチューン「CANNONBALL」は、それはもう鮮烈でした。

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こういうことあんまり言うのもどうかと思うんですが、こればっかりはもっと話題になってほしかったし売れてほしかったなと。
ワイがすごいインフルエンサーとかやったら良かったんやけどな。

ともあれ、彼らはそこから折れたり曲がったりすることもなく、次作でさらに力強いサウンドへ、そして「強くてカッコいいFANTASTICS」への進化を遂げてくれました。

 

「強くてカッコいいFANTASTICS」の顕在化①「PlayBack」

今年3月、彼らの番組の主題歌として先行配信された「PlayBack」。大胆にユーロビートが主張する、ギラギラした音が特徴です。

何度か書いている事なんですがとにかく自分は“あえてのコテコテ・王道”みたいなのが大好物なので、サビの「OK!」っていうあのコーラスとか最高だなと思います。

あとダンスも、この曲は想像していた以上にすごく良かった!

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(今回Dance Practice Videoを出してくれたのもすごく嬉しい新展開でした)

全編通して華美なサウンドに対して全く見劣りすることない、全編見どころみたいなパフォーマンス。フォーメーションも構成も凝っていていかにも難しそうだけど、直感的にノリを楽しめるディスコの振りも随所に用意されているので見応えがある上に疲れない、飽きない。このパフォーマンスだけをとっても、彼らのことを全然知らない他人に勧めたくなります。

この曲は既にライブのステージでも何度もパフォーマンスされてますが、このユーロビートが強い個性になっていて、当然めちゃくちゃライブ映えする。位置づけこそカップリングですが、両A面じゃない?と言いたくなるくらい存在感のある楽曲です。

「強くてカッコいいFANTASTICS」の顕在化②「STOP FOR NOTHING」

「PlayBack」から少し後に、満を持して発表された表題曲「STOP FOR NOTHING」。この曲に関しては、イントロだけのティザーを見た時からワクワクしてました。

伝わりづらいツイートしてんな。とりあえず、この時のイメージはこの曲でした。↓

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曲が始まるのは20秒くらいから。かっこいいなあ(感想)。
ちなみに日本の2人組エレクトロユニットです。

どうでしょう、ちょっとだけ似てませんか?跳ねたリズムやシンセのグルーヴ感。

この曲における中~低音域の音が、STOP FOR NOTHINGではファンクなリズムギターとベースに成り代わった……みたいなイメージが、その時の自分にはありました。

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あと、後々フルで聴いて何よりも高揚してしまったのが、自分にとってすごく親しみ深く感じられるAメロ等のギターフレーズ。

まずイメージしたのはSURFACEでした↓。

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懐かしい。何年か前に某コントのネタで使われて話題になってましたねー。
99年~00年当時、SURFACEの曲はアニメやドラマの主題歌にいくつも起用されていて、子どもだった自分はヒットチューンの一つとして「カッコいいな~」と何の気なしに聴いてたんですが、改めて聴くとすごいファンク。

アニメタイアップ曲に多い印象がありますよね、こういうギターの入ったJ-POPは。シドとか。系譜はBOØWY(というか布袋さん?)とかなのかな、と思います。

BAD FEELING - song by BOØWY | Spotify

余談でした。

話が逸れましたが、まとめると私が「STOP FOR NOTHING」を初めて聴いた時に強く惹かれたのは、これらの要素によって「ファンタとしては新鮮だしカッコいい上、なんかすごく懐かしくて好きなやつが来た!」という驚きと嬉しさがあったからでした。

“スタイリッシュ”の新たな地平

FANTASTICSは当初から“スタイリッシュ”というテーマを掲げています。

このテーマの主な意味は、まず一つに“ダンスパフォーマンスの洗練”。それと、少なくともこれまでのシングルでは、彼らの持ち前の爽やかさとか愛嬌とか…平たく言えば誰でも親しみやすいポップな雰囲気を前面に表出させることにあったと考えています。

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LDHのマッチョなイメージから一線を画したグループにしようという狙いが大いにあったのだろうと想像できます。熱くギラギラしてばかりではないんだと。

ただ、先述した通り「強くてカッコいいFANTASTICS」の一面が現れてきたことにより、この“スタイリッシュ”の意味合いがより広いものに変化したように思うんです。

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めちゃくちゃ観てます、この動画。これまでよりもいっそうパワフルでスペクタクルなパフォーマンス。イントロが特にですが、ビートの重さや音像の形質が本当によく視えて楽しめる。

世界さんの振付はいつも非常に細かく音が拾われていて、観ているととにかく繊細な動きであるように映るけど、この曲ではそれと同時にタテのライン=強めに刻まれていくファンクのビートをはっきりと意識させられます。だから非常に「力強さ」を感じる。

この曲のPractice Videoは2つあって、定点の方は特にそれが分かり易いです。

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(⇧ただしこっちの動画は少し音が小さい)

「PlayBack」とはガラリと異なり、それこそスタイリッシュな印象にとどめながらも楽曲のグルーヴはしっかり体現している、という点が魅力的です。オシャレ。

――ここでちょっと話が逸れますが、FANTASTICSってそもそも最初のツアーからメンバー全員による長尺の演劇パートがあったり、全員主演のドラマや大物ゲストありの冠番組をやったり、あとLDHの配信コンテンツでも他のグループみたいに「MV撮影の裏側!」とかの密着取材系を何故かほとんどやらずに延々ゲーム型バラエティで色んな挑戦をさせられていたりと、かなり特異な活動をしてます。

ただ、それでいて不思議と何かに“染まる”というか、無理に適応しようとしてる感じも全くなく、ひたすら柔軟な印象があります。これにはリーダー2人の統率力とか色々な所以があるのでしょうが、とにかく非常にタフなんですよね。

そういう印象があったので、この「STOP FOR NOTHING」リリースまでの流れの中で、彼らが元々持っていたタフさが表現面にも反映され始めたことにより、この曲のパフォーマンスにおける“力強さとスタイリッシュの両立”が生まれたのではないか。と考えています。

そして、スタイリッシュ=洗練とは本当に文字通りで、FANTASTICSのダンスは細かくて難しいというだけではなくグルーヴを深いところまで鮮明に伝えて楽しませてくれてるんだよなー、と「STOP FOR NOTHING」で改めて実感しました。私は特に楽曲自体が好きな分だけ感動も大きかったです。世界さんありがとうって感じですね。

「STOP FOR NOTHING」に見る、パフォーマーの魅力

あと、改めて魅力的なパフォーマーが揃っているのだなーと感じた部分をあげていくと、まずハッとするのがこのAメロ部分の堀夏喜さん。

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(⇧アウターが黒なのが堀さん。画面のほぼ真ん中でわかりやすい)

この、一人だけ「モノトーンな/ま“ち”の中で」の“ち”、つまりキックが鳴って、語感的にもアクセントになっている箇所を拾って動くところ(0:33~頃)。これはもう一つのPractice VideoでもMVでも全部でやってました。

あと、全編でそうなんですが、他の人と比べて体の軸をとにかくしっかり固定されているのが素人目に見てもわかる。「PlayBack」とかはディスコの横ノリ的動きが多いからか、そういう印象ないんですけど。

基本的にLDHのグループでは(この前のCDTVの『踊ってみた』企画のような例外もありますが)それぞれの動きに出る個性を重要視している、という話はよく聞くので、つまりこれが堀さんの解釈。結果としてスタイリッシュ成分が増してるように思うし、何よりグルーヴィーなので目を惹かれます。

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(⇧ビート音を肩と首でスタイリッシュに拾う堀さんの例その②。2:40~頃。このあと澤本夏輝さん、世界さんと続きますがそれぞれ全く印象が異なりますね)

 

あと、堀さんといえば、この3-3で入れ替わりながら踊る間奏!

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ギターソロ×FANTASTICSパフォーマー良いですね。こんなロックギターのソロで踊るの大変そうですけどね。全員しっかり魅せてくれている。ここに関しては佐藤大樹さんもギターソロの単音どんだけ拾うつもりですかと聞きたくなる凄い動きをしてますね。

という、これら2つの見所のおかげで、世界さん曰く“かなり細かい所まで音を聴いて拾える”、堀夏喜さんってカッコいいなーと再確認しました。

 

それから、ちょっと前後してしまいますが、この曲はBメロで1人ずつがソロ回しみたいにして踊る部分があるんですよね。(0:48~1:01)

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全員カッコいいんですけど、やっぱり一番インパクトがあるのは

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瀬口黎弥さん!! って言いたくなります。このシーン。
ここでフィーチャーされるのが瀬口さんというのがすごく良い。ビジュアルの華と、確立されたキャラクターが発揮されてる箇所だと思います。

ツインボーカルの挑戦と進化について

昨年の7月から年末までに4回、カウントダウン含めると5回あった配信ライブ「LIVE×ONLINE」。

八木さん中島さんのツインボーカルを観ていて面白かったのは、序盤こそ少し緊張や硬さが見えたりもしてなんなら若干不安になるくらいなのに、そこから2人が相互に支え合い、影響し合ってだんだん歌声が美しくなり、同時に得体の知れない迫力が生まれていくあのコンビネーションでした。

EXILE TRIBE総出演だったライブ『RISING SUN TO THE WORLD』を観て、“場数”って想像以上に歌声の聴こえ方に表れてくるものなんだなと実感しましたが、そこへいくとあの2人は経験値の少なさを抜群の信頼関係でカバーしているように見える。抽象的な話ですが、お互いの状態をよく理解しているような気がするんですよね。

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しかも、冬~年末のLIVE×ONLINEなんかでは、それまで感じていた序盤の不安定さもほとんど無くなっていて、明らかに進化しているのが見て取れました。

決まった練習のルーティンなり、ライブのやり方なり、基本的に“取り組み”は人を向上させるものです。そう考えると、開催する毎に趣向を変えて楽しませてくれたLIVE×ONLINEと「High Fever」以降のシングル、そして『マネキンナイトフィーバー』や『FUN!FUN!FANTASTICS』における名曲カバー……これらが、ツインボーカルの表現力をより深く豊かなものに進化させた。そして、その進化が実際に表れてきたのが「STOP FOR NOTHING」という作品だったと思うんです。

「High Fever」「CANNONBALL」の前作から、次作「Play Back」「STOP FOR NOTHING」そしてBOTの「PERFECT MAGIC」と、最近メインで歌われていた曲は特にビートがキモとなっていますが、

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⇧この“人生は一度のShow time~”までの2Aメロの応酬とか、跳ねるビートに負けないように所々スタッカートを入れて、アクセントを大事にしながら歌っているのがよく分かります。

今まで、こういうリズムに乗った表情豊かな歌唱はどちらかというと八木さんが得意としているイメージがありました。

さらに言えば、これまでは八木さんのあとに来る中島さんの繊細な歌声が対比的に爽やかに、洗練されて聴こえる。という印象の楽曲が多かったです。

ただ近作では、中島さんの歌声も楽曲に応じてどんどん色々な表情が見えるように、かつパワフルになっている気がします。

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 この「STOP FOR NOTHING」のサビの中島さんの歌声はアタック感が強く、八木さんに負けず劣らずのパワフルさ。最後のユニゾン部分までグルーヴが保たれていて爽快に聴こえます。

……と、あれこれ言いましたが、要はやっぱりカッコいい!全体的に、爽やかというよりはアグレッシブな“攻め”のFANTASTICSになっていて、非常に頼もしい。これから歌いこなされていくうちに、もっともっとカッコよくなるんじゃないでしょうか。

あと、パワフルさで言えば極め付けはカップリングの「M.V.P」ですよね。この曲についてはもう割愛しますが、ちょっと一聴しただけでは誰だかわからないくらいにアグレッシブな中島さんの声が聴けます。

八木さんはまだ声色が出てる(それがまた良い)のでわかるんですけど、中島さんは本当に別人かと思うし、これまでと違う一面を開拓しようという意欲をビシビシ感じる。

すごくワクワクする進化ですよね。元来の清涼感はそのままに、もっともっと力強くなって、刺すような鋭さも持ち合わせる歌声になったとしたら…とか期待してしまう。今後も楽しみです。

 

まとめ

思った以上に長引き、次の新曲がすでに解禁されてしまった…。
これはマジで反省点です。

でも「STOP FOR NOTHING」の魅力と、この曲を聴いた時の興奮と期待感をどうしてもしっかり述べておきたかった。ついでに、それが誰かに伝染することも祈りつつ。

それから最後に、ここまで考えた上で思いついた自分なりの「FANTASTICS観」を置いておきます。

FANTASTICSってもしかして、力ずくで何でもスタイリッシュにしてしまうグループなのでは?

金属バットを無理やり腕力でメタメタに細くしたスタイリッシュだけど超密度・超重量のステッキを武器にして攻めてくるグループなのでは?と。

少なくとも、彼らがとてもタフな人達なのは間違いない。
これからもどんどん柔軟に新しいものを取り入れて、何でもスタイリッシュに表現してしまって、たくさんの人を魅了してほしい。

そんな未来を期待して終わります。

ここまで読んで下さった方(もし居たら)ありがとうございました!