ミチスガラ

LDHアーティストが好き。色々書きます

THE RAMPAGE『FEARS』・再考

この3曲だったおかげで亡霊にはならず生きながらえております。
こんにちは。

 

別の記事に経緯も書いていますが、シングル『FEARS』としての
FEARS」「LIVIN'IT UP」「FAST LANE」、この三曲の
その音と歌声の魅力について、改めてじっくり考えてみました。


「FEARS」に関しては以前にかなり「否」寄りの感想を書いていますが
今回はそれを踏まえてから、改めて良いと思った点を中心に書いています。

そして最後は1枚の音源として総括しています。
若干ボリュームありますが、よかったら見てください!

 

 

FEARS

youtu.be
恐怖新聞』、えらいことしっちゃかめっちゃかでしたね…!!というのが率直な感想ですが、Twitterを見ていたらそういうツッコミ所満載的な扱いを公式アカウントやキャストの方々も受容していたっぽいので、自覚的にやっている作品だったんでしょうね。Twitterを見ながら観るドラマとして。そういう点では、応援上映で騒いでるような感覚があって非常に楽しかったです。

 

曲の冒頭、警鐘にも聴こえるハイハットロールが周囲を取り囲むように鳴る
→若干くぐもった鍵盤の音が不吉な前兆のように鳴りはじめる
→瞬く間にサウンド全体が色めき立つ

……というイントロで、当たり前だった「日常」が、徐々に勢いを増しながら近づいてくる「非日常」に浸食されていく様子が表されてから、以降ずっと閉塞感漂うサウンドメイクがなされています。

なんとなくすごく「」っぽい。箱鳴り的な意味じゃなく単純に箱の中に居るっぽいですよね、主にドラムと歌声が。あえてこもらせているような質感。

集中して聴いていると息苦しささえ覚えます。
でもだからこそ、苦しみにもがくようなボーカリングが映えるんでしょうね。

あとギューン!って芯が太めなギターのリフが前面に出る楽曲って結構新鮮に感じます。生ライブ生バンドで聴いたら迫力あるんだろうなぁ。
 

Bメロ、旋律自体が美麗なのもあるんですけど
北人さんの「触れ合わなきゃ 胸のぬくもり」と、
壱馬さんの「匂いもしない さわれもしない」めちゃくちゃ良いですよね。

前者は、基本的にメロディアスなフレーズを丁寧に浪々と歌うことで
声そのものの情緒的な響きが映える、という特性が活かされてる気が。
エフェクトがなんか良い。少しだけ重ねてあるのか「個」が薄い。

一方で後者は、やっぱりエモーショナル。詞のなかの世界に飛び込んで
感情の波を全身から表現しているように感じられます。
「さわれも“”ない」この若干タメた声の震えの美しさが
ボーカルラインの中でも特に好きです。

 

そもそもこの曲はわりと言葉が詰まっていて譜割りも複雑めなので
グッと感情を込めるような歌唱表現がしづらいという難しさがあります

それでも最後のRIKUさんがファルセットではなくミックスの力強い歌唱に
変わる所なんか顕著ですが「絶望感」とそこから掴み得た「一縷の希望」を
表現する上でのアプローチが要所要所で果敢になされている、という点は
スリーボーカルの面目躍如という感じがします……。

詞については以前に「語呂があまり良くない」「表現にひっかかる部分が多い」
「尻切れ感がある」などかなり否定的な感想を書きました。
その感想自体は今も変わりません。

(他の記事やTwitter上では何度か言ってますが、好きな曲もあるので
 無闇に毛嫌いしているわけではないです。)

ただ、3曲で全体を1つの作品としてみると見え方が変わり、
それに伴ってこの曲に対する印象も少しだけ変わりました。
それについては後述します。 

LIVIN'IT UP


youtu.be

「笑顔になれるような瞬間を選んでいこう」という、
一転して前向きなメッセージが込められたニュージャックスイング。
まごうかたなきニュージャックスイング。

グルーヴィーかつ明るいイントロのリズムからして完璧です。
ルーツはこういうのです。↓


youtu.be

↑この辺り、今までなんとなく曲調に聴き覚えはあったけど
THE RAMPAGEに親しんだ今聴くとすっごく面白いです…。

特にMVを観ると音もダンスもファッションも既視感がありすぎる!
つまり、あちこちからルーツが見えてくるんです。

しかしLDHからルーツを探っていくと、
つくづくジャンルの定義と密接に関わっているのはビートであり、
ジャンルの変遷≒ビートの変遷なんだなと感じますね。話が逸れました。

この跳ねた16ビートをとことん楽しむかのように
解放的煌びやかサウンド暖かみが感じられるボーカルライン。
「FEARS」の後だとちょっとビックリするくらいの寒暖差ですが、
とはいえやっぱり思わず笑顔になってしまうほどの安心感。

そして、相変わらず小気味よくリズムに乗る川村さんの
トーン高めなラップがどこまでも軽快で心地良い。
しかも、新境地と言えるほど表情豊かな節回しがたくさん。

崩れたLEGO 元に戻すより~”のくだりには、
これまでの日常が失われてしまったという現実への
エクスキューズがありますが

この曲は同時に「この音楽とともにある時だけは“今”を楽しもう」、
そうして前に進んでいこう」と言って、
手を差し伸べているように感じられます。

これは自分にとってすごく好きなTHE RAMPAGE像だな、と感じるので
そういう点でも安心してしまいますね。

 

またこれも後述しますが、
絶望感、恐怖、そして人の弱さを歌う「FEARS」とストイックに戦う覚悟を歌う「FAST LANE」の間でこの暖かい眼差しが感じられる歌が流れるのは、このシングルにおいてすごく象徴的であるように思えます。


そういう意味でも味わい深い一曲です。

FAST LANE


 youtu.be

これもまた、前の2曲とは温度がまるで異なり
100degrees」「THROW YA FIST」などの流れを汲んだ、
いわゆる西海岸系ヒップホップのテイストが濃い一曲。

作曲には「Can't Say Goodbye」「LA FIESTA」「One More Kiss」「Move the World」などを手掛けた……とタイトルを並べただけでひれ伏したくなるAva1ancheさんが携わってます。THE RIOT以来で嬉しい。


“西海岸系”についてもザックリと説明すると
90年代初頭に“Gファンク”として隆盛し、現在まで連綿と続いている
ギャングスタ・ラップと呼ばれるスタイルです。

鈴木昂秀さんが好きそうな感じと言えばファンの方には伝わるかも。笑
これも起源を探ってみると、


youtu.be

このあたりとか。これくらいのテンポと重たいビート感が主です。
特徴的なのが、縦に刻まれる硬質なピアノの音
「FAST LANE」でも真っ先に耳に残りやすい部分です。
この絶妙な緊張感、アガるんですよねー……。

この車を走らせながら聴いたら無敵になれそうなサウンド、一説には
それが西海岸の風土にも合っていたのだろうと言われていて
上の1つめの動画もそうですが、当時の楽曲のMVには
車を走らせているシーンがめちゃくちゃ出てきます。

集団で荒々しく、土埃あげて。怖え~…。

それで言うと「FAST LANE」なんて楽曲自体がそのものずばりだし、
100degrees」のMVにもありましたねー。車のシーンが。


youtu.be

ちなみにテンポが速い順に並べると

THROW YA FIST > FAST LANE > 100 degrees

ですね。ボーカルの構成が目まぐるしくてパフォーマンスも激しいけど
比較してみると結構遅いんだなー、ワンディグ。

 

あと、BALLISTIK BOYZの「ANTI-HERO'S」もテイストが似通ってますね。

youtu.be

オリエンタルな音色を色々盛り込んでて、比較するとすごく華やかですが。
これもAva1ancheさん作曲です。

 

ところで以前書いたnote(既に非公開にしたものですが)に「後輩グループとの兼ね合いも考えると攻撃的なヒップホップテイストには限界があるようにも思える……」というような記述をしたことがあったんですが
「FAST LANE」を聴いて、それは少し浅い認識だったなー…と反省しました。

というのもの、この表題曲と比べてもかなりシンプルかつ王道な西海岸系、という作風にバラエティに富んだスリーボーカルの声が乗るのはやっぱり楽しいな~!!と、この曲で改めて思ったので。


メロディも良い意味で意外性が少なく、だからこそ声質のキャッチ―さが映えるし
川村さんの聴き所満載のラップもじっくり堪能できる作り。

つまり、なんというか硬派!硬派だなーと思うんです。そこがまたカッコいい。
表題曲でも良かったのではと思うくらいに。
まあ、それには少しシンプルすぎるのかもしれないですが…。

でも逆に言えば、表題曲ではないからこそ硬派な良曲に仕上がったのかもしれないですが……しかしさらに逆に言えばこれをあえて思い切って表題曲で出してきてもめちゃくちゃカッコよかったよなぁ逆に逆にうるさいですよね。
逡巡しすぎ。失礼しました。

ラップパートの話します。川村さんが作詞!しかもカッコいい!!
確固たる意志を感じる強くてアツいフレーズの連発。

興味ないHatersとChaseより時代とChase
I’m a Genius 先に立つ FAST LANE
この辺り最高ですよね。特に後者はパンチラインと言って差し支えない。

LIVE×ONLINEで初披露された時は「100degrees」を彷彿とさせるようなモノクロ画面で、車とかセットもかなり凝っていて、それも本当にカッコよかったですし
何よりコンセプトが非常に分かり易く一貫しているのが良かったですよね。

THE RAMPAGEって音楽的ルーツへのリスペクト表現が多いですよね。
ずっとそこはLDH的にも大事にしている部分なんだろうなーと思います。

(川村さんがMCで『久々のTHE RAMPAGEらしい楽曲』と言っていたけど、
 もしかしたらそういった部分も含めてなのかもしれない。)

つまり己の信じる道を突き進もうとする意志に満ちた言葉をこれでもかと畳み掛けてくる、そういう野心に満ちた曲でありつつも、作りは王道、そして自分達のルーツへのリスペクト精神も感じられるという……いやーカッコいいなー!

 

それと「FEARS」がグループにとってちょっと挑戦的な作風である分、他の二曲をそれぞれ今までにやってきた楽曲ジャンルの、それもごくスタンダードなスタイルに仕上げることでバランスを取る意図もあったのかな……というのはやっぱり思いますね。

しかし振り幅が大きい。とても。笑

三部作として聴く「FEARS」

そこで、それぞれ別個の作品としてだけでなく
三部作として聴いてみると良いのではないか、と私は考えました。

自分の弱さと向き合う、内省的な「FEARS」から
笑顔になれる時を見つけて、前を向くための「LIVIN'IT UP」。
そこから未来に向かうために自分を奮い立たせるための「FAST LANE」。

収録順をそのまま時系列とし、それぞれ曲調の大きく異なるこの三曲を
三部構成の物語として受け取ってみると、

この振り幅に関しても
ああ~~!!アリかも!!面白いかも!!と思ったのでした。

まとめ

今更も今更ではある上に、やっぱり自分の好みで言うと「FAST LANE」をフィーチャーしてほしい気持ちがある、というのが正直なところではありますが。
改めて掘り下げて考えたことで自分なりの受け取り方はできたように思います。

 

今後もブログでは記事に織り込む機会のないような自分と音楽のことやそれ以外のことも雑多に書いていこうと思っています。

読んだ方が考えを深めたり、より音楽を楽しめるようになる
その一助になれたら幸甚です。ではまた~!