ミチスガラ

LDHアーティストが好き。色々書きます

THE RAMPAGE『THE RAMPAGE FROM EXILE』と『REBOOT』と“REBOOT”

Jr.EXILEによるEXILE20周年記念企画『EXILE TRIBUTE』の4作品が今月、4週連続でリリースされます(2作はリリース済)。

それぞれ感想をまとめたいと思いブログを書き始めたのですが、考えてみれば4グループとも「アルバム発売」「有観客ライブ復活(そして私は初めて各グループの単独ライブを生鑑賞できた)」という大きな出来事があった今年。

せっかくその締めの月でもあるので、アルバム/ライブについても一記事にまとめることにしました。リリース順に4記事。なるべく遅れすぎないように書いていこうと思います…。

まずはTHE RAMPAGEから。なおライブ感想の項ではセットリストのネタバレがありますのでご注意ください。

『THE RAMPAGE FROM EXILE

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No Limit

原曲は、2013年9月に発売されたシングルの表題曲。

EXILEにとって2013年というのは、HIROさんの勇退という重要な転換期を迎えていた年だったんですよね。最後の紅白歌合戦は自分も観ていたなぁ。

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『No Limit』が発売されたのは、HIROさんにとってのラストライブとなったツアー“EXILE PRIDE”の東京ドーム公演(9月26日-9月27日)が始まる前日の9月25日でした*2。そのことも踏まえると楽曲とMV、特にMVのラストシーンが示すものは、当時を知らない自分でも何となく見えてきます。

思い返せば昨年、私がEXILEの「RED PHOENIX」という楽曲に感銘を受けたのは、あの曲とMVを通して“EXILEEXILEで在り続けること”の決意と覚悟が非常に明確かつ丹念に示されていたからでした*3

この「No Limit」という楽曲からも、それと同種のマインドが感じられます。「限界に挑戦し続ける」と歌う詞や堂々と勇ましいアレンジは、彼らがこの先も止まることなく前進し続けることを宣言するための表象だったんでしょうね。

そうした背景を辿ると、なかなか大きな意味を持った曲を任されたものだなと思います。ただ個人的には、この強い意志と覚悟を歌った曲をTHE RAMPAGEがカバーするというのは、自分なりに見てきた彼らの在り方も考えると非常にしっくり来ました。

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ベースミュージックの様相が強くなり、原曲の持つ勇ましさがより低音域から感じられるようになったリミックス。原曲と聴き比べることで2013年当時と現代のEDMにおけるトレンドの変化がそのまま感じられるのが面白いところです*4

THE RAMPAGEは実力のあるグループですが、16人という大所帯にくわえ元々志向してきた音楽性も相まって、何となくやっぱり“泥臭さ”“愚直さ”といったイメージが似合うように思います。

「No Limit」で歌われる痛いほどひたむきな精神には、そんな彼らのイメージとの親和性を感じます。

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Aメロから川村壱馬さん→RIKUさん→吉野北人さんという順にパートが来るのは久々に感じますが、やっぱり独特な迫力があります。サビ前の吉野さんの「叫んでやれ」の爽快感と2番のRIKUさんの「切り裂いてやれ」の力強さ、最後のフレーズ「Won’t let you down/I won’t let you down」を歌う川村さんのゆるぎない存在感。各パートでもしっかり個性が出ています。

あとこのカバーには大きな特徴が二つあって、一つは原曲と同じようにサビがボーカル3人のユニゾンであるということです。THE RAMPAGEの既発売曲では何気に初めてですよね…?

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既発売曲では*5

個人的には3人のパートの移り変わりで生まれるダイナミクスがやはり好きですが、じっくり聴くとちゃんと3人の声が分かるようになっていて、これはこれで面白みありますね。インパクトもある。

それともう一つの特徴は、新たにMA55IVE THE RAMPAGEによるラップパートが加わっていること。これが良い(↓)。

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「SILVER RAIN」でTHE RAMPAGE楽曲に参加して以降、MA55IVE THE RAMPAGEは一つの武器というか飛び道具的な存在になっているのが分かります。

少年のような良い声をしている山本彰吾さんの印象的なフロウから始まり、神谷健太さんLIKIYAさんと低いトーンが続き、そこから鈴木昂秀さんがトーンを高めたところで浦川翔平さんがキメる、というのも流れがあって気持ちが良い。なお、この部分はダンスの振付もヒップホップ色が濃いものになっているそうです*6

あと、MVに関して言えばやっぱり何といってもパフォーマーのソロ回しシーンが特にカッコいいです。

つまり寸分違わず同じ位置、カメラワークで撮影していると。ハイテクですね*7。動きがシームレスに感じられることで躍動感があり、非常に見応えがあります。

今回のMVは背景のモチーフなど原曲MVをオマージュしてる部分もありますが、全員のパフォーマンスがしっかり美しくとらえられている映像を観ていると、この(↑)陣さんのツイートにもあるように「SILVER RAIN」MVからの流れを感じます。パフォーマンスの美しさと気迫が映像から感じられるようなMVは折に触れて見たいので、さらなる進化も期待したくなりますね…*8

あなたへ

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続く「あなたへ」は打って変わって、しっとりとした冬のラブバラード。原曲は2011年11月発売のシングル表題曲です。

この曲は、吉野さん曰く「THE RAMPAGEにはキザなイメージがあるから、バラードもキザに歌えると思う」とEXILE ATSUSHIさんから提案されたそうです*9。ロマンチックな世界観のラブバラードでも照れや無理なく歌い上げられる、的な意味かと思いますが。

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「Seasons」などに近い、バラードらしくシンプルなパート構成。ぐっと現代的に洗練された静謐な音色が3人の歌声を引き立たせています。

現行のREBOOTツアーではこの曲も披露されていて、私は広島公演の配信と福井公演の会場でその歌を聴くことが出来ました。今更な話ですが、今年からやっと生ライブを鑑賞できるようになってより実感が強まりました、今のスリボの歌はすごく良い。個性が明確に分かれていて、それぞれが引き立て合いながら表情とダイナミクスを作り上げていくスタイルには既に安定感があります。

CLの番組でATSUSHIさんと3人がコラボして「あなたへ」を歌唱したのも観ましたが、「トレンドを追っかけるというよりはトレンドを作る人達になってほしい、というスリボへ向けたATSUSHIさんのコメントには頷けるものがありました。様々なスタイルに対応できる実力があるからこそ不動、不惑の存在感を放つ人達になってほしいと(だいぶと差し出がましいですが)自分も思います。

BOW & ARROWS

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2012年7月発売のシングル。アニメーションと実写を融合したハイクオリティな映像のインパクトがすごいMV、少しBOTに繋がる片鱗を感じますね*10

EXILEの軌跡をたどっていく詞の趣も含めて、非常にEXILEっぽい”と感じるダンスポップ。自分が当初抱いていたEXILEのイメージはまさにこういう楽曲でした。根本的に明るくてキャッチー、かつ大胆不敵な感じ。

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一方でTHE RAMPAGEにはあまり無かった楽曲なので、正直今回のカバーの中で一番どんな風合いになるか想像しづらかった曲です。が、案外まったく違和感がないですね。先述した通り、そもそも楽曲を自分達のスタイルに落とし込める彼らのポテンシャルの高さを感じます。サウンド的にはあまり大きな変化はなく、原曲のテイストを大事にしたカバーですね。

STEP UP

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他の曲に比べると断然新しい、2018年7月に発売されたシングル。この(↑)リリックビデオは世界さん、佐藤大樹さん、TETSUYAさんの3人がプロデュースして作られたものだそうです。

これはもう、どストレートな選曲でしたね。ニュージャックスイングといえば元々1stアルバムでカバーしていた「New Jack Swing」はもちろんのこと、「LIVIN' IT UP」「BOND OF TRUST」等のオリジナル楽曲でもTHE RAMPAGEが大事に踏襲してきたジャンルなので。*11

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原曲は正統派な印象ですが、カバーは絶妙なリミックス感で作られています。あの明快なビートの小気味よさはもちろんそのままで、よりヒップホップの色味が増しているように感じます。正直かなり好き。ボーカルもそれこそ「New Jack Swing」の時のように各人の個性が立っているし、私は4曲の中で一番この曲が好きでした。

ニュージャックスイング、今後もTHE RAMPAGEの強みの一つとして程よく取り入れていってほしいと願っております*12。歌声も引き立つし、年を重ねる毎により深みが出てきそうでもある。THE RAMPAGEには特にこの辺りのジャンルを得意としている岩谷翔吾さん、浦川翔平さんという魅力的なパフォーマーも居ますしね。

しかし、こうして順にみていくと、その時々のEXILEを象徴するような楽曲が多く選ばれているのがわかりますね。彼らは他グループの人などから“(EXILE TRIBEの中でも)EXILEっぽいグループ”と評されがちな印象があるので*13、そういう役割を託したくなるのかもしれないです。

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アルバム『REBOOT』とツアー感想―—“REBOOT”とは何だったのか

※この項では現行のツアー『"REBOOT" 〜WAY TO THE GLORY〜』追加公演のセットリストの内容が含まれますのでご注意ください。

2021年2月に発売されたTHE RAMPAGEの3rdアルバム『REBOOT』は、コロナ禍の苦難を経てきた彼らの“これまで”と“これから”、それとともにファンへの想いが示された作品でした。この所感については、リリース時に寄稿した記事で具体的に書いています(↓)。

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特にリード曲「SILVER RAIN」とそのMVは、THE RAMPAGEの“今”を一曲で表現しきった秀作でした。

そしてアルバムのタイトル“REBOOT(再起動)”が意味するのは、この作品を通して彼らの音楽が再構築されるということ、そしてコロナ禍を経た先の未来へファンを“連れていく”ということ。記事ではそうまとめていました。

『REBOOT』発売後、THE RAMPAGEはホールツアー『PROLOGUE LIVE TOUR 2021 "REBOOT" 〜WAY TO THE GLORY〜』を3月~4月にかけて開催*14。ライブパフォーマンスを大きな強みとしているTHE RAMPAGEの、有観客でのライブステージが復活しました。

そこから少し間をおいて7月、東京ドーム公演2日間を含めたアリーナツアー『"REBOOT" 〜WAY TO THE GLORY〜』が始まりました。彼らはそこでセンターステージという新たな見せ方でパフォーマンスを作り上げた上で、初のドーム単独公演を成功させました*15

そして現在の追加公演では、定番化していたMA55IVE THE RAMPAGEのステージやパフォーマーによるスペシャルパフォーマンスを徹底的に省き*16、本公演から大幅に内容を変更。EXILEカバー4曲と最新シングル『LIVING IN THE DREAM』収録曲、さらに「LA FIESTA」「DOWN BY LAW」「Starlight」「Seasons」など、以前のツアー『THROW YA FIST』や昨年の『LIVE×ONLINE』をも彷彿とさせるような楽曲と演出が追加されました。

“これまで”の道のりと、新しく提示された“これから”。そしてもちろん、ファンへの想いもしっかり込められたライブ。各公演を観てきた中で気がついたのは、THE RAMPAGEがこの一年を通して文字通りの“REBOOT”を実践していたということです。特に追加公演に関してはその印象が強くありました。

単純にアルバム収録曲を中心とした内容で披露するツアーというだけではなく(むしろ追加公演に関してはアルバム収録曲を削減したにもかかわらず)、観た人の中に自ずから“REBOOT”の実感が生まれるような内容になっている。それによって『REBOOT』という作品の表現するものが、大きく拡張されたような感覚をおぼえました。“アルバムを引っ提げてのツアー”とかよく言いますが、そんな言葉では収まらない音楽的実践による表現の面白みがこのツアーにはあったような気がします。

最後に、やっとフルライブで観ることができた彼らの生パフォーマンスについて簡単に。

取り急ぎRIKUさんは声が本当に大きいということを実感できました、もちろん良い意味で。配信ではあまりわからなかったことですが生ライブだと声量の迫力が段違いに際立っていて、やっぱり広い会場で歌うのが似合う人なのだとわかりました。もちろん他の二人もすごくて、吉野さんの抜群の個性と煌めくような声音の美しさ、不動の存在感を誇る川村さんの轟くような声と表現力にも、何度も胸打たれました。何となくでしかないんですが、今の御三方はとても良い状態で歌と向き合っているように見えます。それくらい贅沢な歌声でした。

パフォーマンスで言うと、これは本当に今更な話ではあるんですが……ライブで全員を自由な視点で観ていくうち、こんなにも一人一人やってることが違うのか!と驚きました。結構見慣れてきた追加公演の時でも13人それぞれの個性を見ていくのは厳しくて歯痒かったんですが、どの曲も全体の統一感はあるのに細部の動きが驚くほど違う。指先や表情が表すものがそれぞれ異なる。そういうものだとわかってはいたんですが、実際にライブで観ると想像以上に面白かったです。

しかし、Abemaで配信された『X’mas LIVE PARTY』の内容、シングル表題曲の全曲披露という内容だったとは。

これから購入する人も居るかもしれないので詳細は伏せますが、本当に良いライブでした。これも“REBOOT”と言えますね。楽曲を通して軌跡を振り返り、今の彼らのパフォーマンスによって更新し、昨年や今年から新たに彼らに注目し始めたファンもひっくるめて向き合い、未来へ連れて行く。やっぱりなんというか、前に記事でも書いたんですが、篤実。そう表現したくなるグループだなと思います。


*1:THE RAMPAGE from EXILE TRIBE 「EXILE TRIBUTE」ARTIST PHOTOページ | EXILE TRIBE mobile

*2:EXILE ライブツアー 2013『EXILE PRIDE 5大ドームツアー』開催決定! - EXILE mobile

*3:EXILE、新体制14人の決意を刻んだ「RED PHOENIX」 再生と復興を掲げる“LDHエンタテインメントの集大成”に - Real Sound|リアルサウンド

*4:ちなみに2013年はAviciiの「Wake Me Up」やZedd「Stay The Night ft. Hayley Williams」などEDMブームの火付け役となった金字塔的楽曲がリリースされた年でした。この波がやがて日本に上陸し、かの「R.Y.U.S.E.I.」の大ヒットにも繋がっていくわけですが、LDHの人達はこの頃からその時流を捉えていたのだと思います

*5:いつ日の目を見るんでしょうね、ICE BOXの曲。

*6:THE RAMPAGE 浦川翔平から「No Limit」のバズリの理由を探る! <BUZZらないとイヤー! 第15回> | TOKYO HEADLINE - Part 2

*7:原曲の方も1台使うだけで数千万円くらいかかる機材を2台使っているという凄すぎるMVですが…。

*8:ちなみにこの陣さんのツイートを見た当初「進化しても黒は黒として何処かに所持していてほしいな~」と少し寂しく感じたりしたのですが、実際の彼らを観ていると“進化”によって初期の何某かの要素が失われるわけではない気がするので今はスーパーサイヤ人的な意味だと解釈してます

*9:BALLISTIK BOYZ日高竜太がEXILE HIROから掛けられた“ずっと大事にしていきたい言葉”を明かす<インタビュー>(3/3) | WEBザテレビジョン

*10:アニメーション部分を制作してるのは『ポプテピピック』等で有名な神風動画。

*11:ちなみにTHE RAMPAGEの「New Jack Swing」カバーが収録されたアルバム『THE RAMPAGE』は、EXILEが「STEP UP」を配信シングルとして発売した2か月後である2018年9月に発売。この年、Bruno Marsの「Finesse (feat. Cardi B)」のヒットを皮切りにニュージャックスイングのリバイバルブームが特に盛り上がっていたので、それを意識しての原点回帰だったのでしょうね。

*12:既に定着しているので、そもそもファンが多いとは思いますが

*13:「(ランペは)今のEXILEと近いところがある」Jr.EXILE世代が継承する、EXILEのDNAーー中務裕太、吉野北人、木村慧人、日髙竜太に聞く | TOKYO HEADLINE - Part 3

*14:THE RAMPAGE PROLOGUE LIVE TOUR 2021 "REBOOT" 〜WAY TO THE GLORY〜開催決定!! | NEWS | EXILE TRIBE mobile

*15:THE RAMPAGE LIVE TOUR 2021 "REBOOT" 〜WAY TO THE GLORY〜 | EXILE TRIBE mobile

*16:この点に関しては、これらのパートを楽しみにしてチケットを買って観に行った人も沢山居ると思うので賛否あるかと思いますが